産業廃棄物 1.はじめに FONT SIZE> 2.産業廃棄物とは FONT SIZE> 上記とは別に、特別管理産業廃棄物(PCBや石綿などの特定有害産業廃棄物、腐食性の物質、感染性産業廃棄物などが含まれる)とよばれるものもあります。 3.産業廃棄物の排出量と処理の状況 FONT SIZE> 4.最終処分場の設置状況と不法投棄の状況 FONT SIZE> 5.産業廃棄物の排出量と処理の状況 FONT SIZE> 平成3年の改正では、「多量に廃棄物を排出する事業者に対して、都道府県知事は産業廃棄物の処理計画の作成を指示することができる」となっていましたが今回の改正では「減量に関する計画を必ず盛り込むこと」となり、減量の取り組みを徹底することとしています。 6.おわりに FONT SIZE>
産業廃棄物は年間約4億トン(平成6年度)発生していますが、この発生量は平成2年からほぼ横ばいの状態です。産業廃棄物のうち約40%がリサイクルされていますが、このリサイクル率も10数年間横ばいの状態となっています。産業廃棄物の発生量が抑制されないのに対し、産業廃棄物を処理するための新規の最終処分場の設置件数は減少傾向で、平成2年には174件あったのが、平成6年には130件となっています。全国の最終処分場の残余年数は平成6年度では2.6年となっており、21世紀初頭には埋立の残余年数は0になるという推計もあります。
また、処分場の設置を巡る地域紛争の発生件数は平成4年から平成8年までの5年間で200件近くにのぼります。現在でも、処分場設置予定地の住民との摩擦は激しく、産業廃棄物の不法投棄が後を絶ちません。
このような様々な問題を解決し、産業廃棄物の適正な処理を確保するため、産業廃棄物の処理に関する法律である「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(通称、産業廃棄物処理法)が平成9年に改正されました。本講座では、産業廃棄物の処理の現状とどのように法律が改正されたか、について概要を述べます。
産業廃棄物とは、事業活動に伴い生じた廃棄物で、一般には以下の19種類をいいます。燃え殻 火力発電所から発生する石炭殻など 汚泥 工場排水処理や物の製造工程などから排出される泥状のもの 廃油 潤滑油、洗浄用油などの不要になったもの 廃酸 酸性の廃液 廃アルカリ アルカリ性の廃液 廃プラスチック類 紙くず 建設業、紙製造業、製本業などの特定の業種から排出されるものなど 木くず 建設業、木材製造業などの特定の業種から排出されるものなど 繊維くず 建設業、繊維工業から排出されるものなど 動植物性残さ 食品、医薬品、香料の原料として使用した動植物に係る不要物 ゴムくず 金属くず ガラスおよび陶磁器くず 鉱さい 製鉄所の炉の残さいなど がれき類 工作物の除去に伴って生じたコンクリート破片など 動物のふん尿 畜産業から排出されるもの 動物の死体 畜産業から排出されるもの ばいじん 工場の排ガスを処理して得られるばいじん 産業廃棄物を処理するために処理したもの コンクリート固形物など
産業廃棄物の排出量は、平成2年度から約4億トン程度で推移しており、平成6年は4億545万トンでした。このうち、1億5600万トンがリサイクルされ、中間処理により1億7000万トンが減量され、最終処分量は8000万トンとなります。
業種別にみると総排出量のうち、製造業が34%、建設業が19%、農業が19%、電気・ガス・熱供給.水道業が18%を占めています。廃棄物の種類別では、汚泥が45%、動物のふん尿が18%、建設廃材が15%を占めています。
産業廃棄物処分場の新規設置件数は、平成元年には216件であったのが、平成2年には174件、平成6年には130件まで減少しています。最終処分場の残余年数は全国では2.6年、ごみの発生が多い首都圏では0.9年となっており、埋立の残余容量が0となりかねない状況になっています。
施設の設置を巡る地域紛争の発生は、平成4年に23件であったのが、平成5年以降、年間40件から50件まで推移しており、新規設置に関しては地元住民の根強い反発があることがうかがえます。
不法投棄は、平成5年には274件(不法投棄量34万トン)であったのが、平成7年には679件(44万トン)と増加しています。不法投棄された産業廃棄物としては建設系の廃棄物が全体の9割近くを占め、不法投棄の実行者のうち約5割が排出事業者です。
産業廃棄物処理法は、以下の表のような3つの対策を進めるように改正されました。1.廃棄物の減量化およびリサイクルの促進 ・多量排出事業者による減量化の推進
リサイクルに係る規制緩和2.廃棄物処理に関する信頼性および安全性の向上 ・設置手続きの明確化
・施設の維持管理の適正化
・廃棄物処理業の許可要件の強化
・廃棄物処理に関する諸基準の強化および明瞭化3.不法投棄対策 ・産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度の拡充
・罰則の大幅な強化
・現状回復のための措置
施設の維持管理に関しては、(1)設置者に対して維持管理計画の策定・遵守を義務づけ、計画に基づく適正な維持管理が行われない場合、改善命令や許可取り消しの事由となる(2)維持管理状況を記録し、利害関係者の求めに応じ閲覧させる仕組みを設けた(3)設置者は、埋立終了後に必要になる維持管理費をあらかじめ環境事業団に積み立てることが義務付けられる(4)最終処分場からの浸出水などの状況について都道府県知事が基準に合致しているかを確認する仕組みを設ける、などの措置が、今回の改正により講じられるようになりました。
マニフェスト制度は、排出業者が廃棄物を適正に処理した旨を記載した帳票を処理業者から受け取る制度です。今回の改正前は特別管理産業廃棄物(爆発性、感染などにより人の健康に被害を与えるおそれのある産業廃棄物)に限って導入されていましたが、今回の改正により、その対象がすべての産業廃棄物に拡大されました。
産業廃棄物の不法投棄などに対する罰則規定が、今回の改正において、下表のように大幅に強化されました。罰則の内容 改正前 改正後 ・無許可営業
・事業停止命令もしくは措置命令違反3年以下の懲役、300万円以下の罰則叉はこの併科 3年以下の懲役、1000万円以下の罰金叉はこの併科 ・産業廃棄物の投棄禁止違反 特別管理廃棄物などの場合1年以下の懲役叉は100万円以下の罰金
上記以外の廃棄物の場合6月以下の懲役叉は50万円以下の罰金同上 ・名義貸しの禁止違反 なし 同上 ・委託基準違反
・改善命令違反1年以下の懲役、100万円以下の罰金 1年以下の懲役、300万円以下の罰金 ・維持管理事項記録違反
・産業廃棄物管理票虚偽記載などなし 30万円以下の罰金
以上、産業廃棄物の現状と法改正について簡単に述べました。現状では、廃棄物のリサイクル化をいかに進めるかがポイントになりますが、同時に生産者が廃棄物の排出量自体を抑制する技術やシステムの導入を促進する必要もあります。
また、産業廃棄物の不法投棄を防止するようなシステムの構築も、産業廃棄物に対する国民の不安を解消するためには重要でしょう。